町内会は危険な香り 2

町内会は危険な香り 2

「ずいぶん沢山買えちゃいましたね」
緑川はそういうと、少年のような笑顔を和子に向けた。
こんなさわやかな笑顔な緑川が、実はさっき、ペニスを和子の肩に乗せていたなんて・・・・
その乱暴なエロティックさに和子はうっとりとしてしまった。
そして二人は、集会所へと芋を運んだ。
「どこに置いておきましょうか」
和子は緑川に聞いた。
「和室でいいんじゃないでしょうか」
和室・・・・和子はその言葉に胸が高鳴った。
集会所の和室の畳は、緑川がこまめに手入れをしているのでとても寝心地がよいとの噂だった。もしかして、緑川は和室で和子を・・・・・そんな妄想が一瞬で頭を支配してしまった。
「じゃあ運びますね!」
顔が赤くなってしまったのを悟られないように、和子は芋の箱を持ち上げ、和室へと運んだ。
緑川もあとについてきたのだった。

「このへんでいいかしら」
和子は和室に入り、箱をおろした。
「いいですよ。」
緑川の声が近づいてくる。和子はとても恥ずかしくなり、振り向くのをためらった。
そのときだった。
「キャッ」
和子の背中になにか硬いものが押し付けられてきた。もしかして・・・・これは・・・・・

和子は緑川の手を取り、胸元へと導いた。緑川の熱い息づかいが聞こえてくる。

そのときだった。集会所のドアをたたく音がした。
「ドンドンドン」
「すいませーん」
外から声が聞こえる。
和子ははっとしたが、緑川は少しも慌てていなかった。
「すいませーん、緑川さんいますかー」
声の主は緑川を捜しているようだった。少し甲高い女性の声・・・・
和子は部屋に漂っていた猥らな雰囲気をかき消そうと、芋をいくつかつかんでドアへと歩いていった
「今あけますー」
ドアを開くと、そこに立っていたのは町内会の幹部、中山だった。

和子とは少々面識がある。町内会の行事でよく顔を合わせていた。
中山の家には娘が二人いて、上の娘は緑川の息子と同級生だったような・・・・・
「あら、遠藤さん、どうしたんですかお芋。」
中山は和子の持っているイモが気になったようだった。
「焼き芋大会の芋を仕入れてきたところだったんです」
緑川がやってきて返事をした。
「今度は焼き芋ですかー、さすが緑川さんですね、ところでそうそう、緑川さん、4号棟の前の排水溝が壊れてしまったみたいで、報告にきたんです」
中山は甲高い声でしゃべった。
和子よりすこし若いだろうか、よく手入れのされたまつ毛に、たるみのない首筋。
エキサイティングな美人ではないけれど、かわいらしさを失わない中山は近所でも「きれいな奥さん」と評判だったのだった。
「それは大変だわ、緑川さん、早く行ったほうが」
和子は言った。
緑川は手先が器用で、あちこちの修繕なども得意なのを知っていたからだ。
「そうねえ、私もそう思うわ」
中山も言った。女の和子から見ても愛くるしい表情だった。

「じゃあ遠藤さん、芋の片づけを頼んでもいいですか。」
「ええ、大丈夫です」

緑川は、集会所を出ていった。
和子はドアから見送っている、そのときだった。
緑川の後ろについて歩いている中山が、和子のほうをちらっと振り返った。和子は背筋が凍った。
その目がとても鋭かったのだ。
ああ・・・・・これは女の目だ。性としてのメスの目。
まるでこの集会所で緑川と和子の間に起っていたことをすべて見透かしているかのような、雌の目。
和子は何も悟られまいと、必死に笑顔を作って中山に会釈をした。
中山もふと笑顔で会釈をして、緑川を追いかけて行った。

ああ、きっと中山さんも・・・・・緑川さんに・・・・・
中山の目を見た瞬間、和子は理解してしまったのだ。
中山もきっと緑川と秘められた関係を続けているに違いない。和子は中山のふっくらした唇に緑川のペニスが押し込まれた様を一瞬で想像してしまった。
この集会所にきたのも、緑川とのセックスが目当てだったのではないだろうか。
そしてきっと、ここではなく4号棟に誘い出したのだ。
4号棟の管理人室は現在空室で、その地下に大きな物置があることを和子は知っていた。
きっとあそこに誘い出すのだ・・・・・
和子は、数時間前に背中に押し当てられたペニスの感触を思い出していた。そして膝が震えていた。

私なんてどうせ・・・・・中山のようにかわいさもなく・・・・・肌もボロボロで・・・・勝てっこないわ。

そして、芋を握りしめながら、なおも中山と緑川の華麗なセックスを想像してしまったのだった。
とても胸が苦しかった。そして悔しかったのだ。

こうしちゃいられないわ。
和子は戸じまりと火の元栓を確認し、集会所をあとにした。

そして、その足は自然と、4号棟へと向かっていったのだ。
和子の胸は激情に震えていた。

4号棟で今ごろあの二人は・・・・4号棟で・・・・
脳裏には中山のおおきな胸を揉み、うっとりとする緑川の姿が浮かんでいた。あんなに豊満な肉体なら、きっと私なんかよりも緑川さんを満足させることができるんだわ。
きっとあの集会所でも、二人は何度も交わったに違いない。
私を誘い出したように中山を誘い出し、そして・・・・

7号棟を過ぎるころ、和子の悲しみはさらに膨らんでいた。
4号棟の湿った管理人室の奥、緑川の吐息、そして固くなったペニス。きっと中山は子猫のような声をあげて
緑川をとりこにしているのだ・・・・・

ああ、緑川さん・・・・・

5号棟を過ぎると、次は4号棟だった。
和子の目には涙が溜まっていた。

和子は小走りになり、大きな胸が上下左右に揺れていた。

「4号棟・・・・4号棟・・・・アッ!!」
和子は大きな声をあげそうになり、息を呑んだ。
なんと、4号棟の前に緑川がいたのだった。隣には中山もいる。まさか・・・・・・
和子は、気づかれないように茂みに隠れて近づいていった。

「あー、やっぱり蓋が壊れていただけですね」
「あら、じゃあすぐ直るんですね」
「大丈夫です。心配いりません。」
なんと、中山が知らせに来たとおり、二人は排水溝の修理をしていたのだった。
「なんだ・・・・・私の思い過ごしだったのね・・・・。」
和子はほっと胸をなでおろした。
涙が流れるほどに、中山に嫉妬しようとしていた自分が恥ずかしかった。

「夕飯は、シチューにしょうかしら!」
和子は、家へと向かったのだった。

ところが、和子が安心して去った後、それはやってきたのだ。

和子が去っていくのを見計らって、中山は緑川の耳元でそっとささやいた。
「今日、夜まで暇なんです。」
緑川は黙ってうなずいた。

それは芋煮会の日のことだった。和子が緑川と初めて結ばれたその日。
芋煮の輪の中に緑川がいないことを、中山は敏感に察知していたのだった。
「緑川さん・・・・・・・まさか・・・・。」
中山はそっと芋煮の輪から離れ、緑川を探すことにした。
とはいえ、どこにいるのか察しはついていた。きっと集会所に違いない。
それは女の勘というものだ。

一見静かな集会所に、中山は近づいていった。
窓は閉まっているが、カーテンがわずかに開いている。隙間は数センチか数ミリか。
中山は隙間を除く前に、全神経を耳に集中させた。
「ギシッ ギシッ」
集会所の床がきしむ音が聞こえた気がした。この・・・・この窓の中で・・・・
次々にいろいろな声が聞こえてくる。
「アッ・・・緑川さんッ・・・・ヒッ!!!」
これは女性の声?
「アアーッ」
緑川の声だ。間違いない。この中で緑川が誰かと!!
中山はそっと隙間から集会所をのぞいた。
白い肌が見える。わずかに動いている白い肌。これは・・・・
「お尻だわ!!!」
中山は、その真っ白な尻に釘付けになった。
「なんて・・・・美しい・・・・・」
今まで温泉やプールの更衣室で多くの女性の尻を見てきたことはあったが、こんなに美しいお尻を見たのは初めてだった。
まるで高級な大福のように真っ白で・・・・きめの細かい肌。
そのお尻の下から、緑川の足が伸びていることにさえ、中山は気がつかなかったのだ。
「ハアッ・・・・ハッ・・・・ハッ」
この尻の持ち主は誰であろうか。小刻みに前後に揺れながら、官能的な声をあげているのだ。
顔は見えない。
そのときだった。
その美しい尻に、緑川の顔が吸い付いてきたのだった。
「やっぱり・・・緑川さん・・・・」
緑川は夢中になって、その尻を舐めまわしていた。唾液がしたたり落ちるほどに。
そしてその割れ目を、舌で何度もなぞっている。
「アッ・・・・ハアッ」
夢中になってそれをのぞく中山も、いつしか息遣いが荒くなってきた。腰から下の力が、少しずつ抜けていきそうに震えがはじまった。
あのお尻の持ち主がうらやましい。
激しい嫉妬の念が胸にこみあげてくるのと同時に、あまりにも激しい緑川のセックスを見ているだけで、自分の尻にも快感が伝わり、全身がとろけるような感覚だった。
「もっと・・・・もっと・・・・」
いっそう二人の絡み合いが激しくなってきた。
ふと、緑川が尻を舐めながら、こちらを振りかえった。
「アッ」
隠れようと思ったが遅かった。
中山は緑川とはっきり目が合ってしまった。

緑川は、中山を見つめ、そして、ニヤっと笑ったのだった。
まるで、次はお前の番だと言っているように。
「緑川さん・・・・・・」
中山は、あわてて緑川から目をそらすと、その場を逃げるように駆け出した。
あの町内会長の緑川さんが、あんなにお尻の綺麗な人と・・・・・
走りながら、真っ白なお尻を執拗に嘗め回していた緑川の舌づかいを思い出し、中山の顔は紅潮していた。
きっと・・・・・次は私の・・・・
ゴージャスな美人の中山であったが、性的に淡白な旦那と暮らしており、緑川のような激しいセックスはいまだ経験が無かったのだった。
ああ、あの激しい舌使いで私の体をめちゃくちゃにしてほしいわ・・・・・

中山はその日以来、毎日熱に浮かされたように緑川を思い出し、集会所へと毎日通っていたのだった。
今日こそ、緑川に会えるかもしれないと。
そして今日も、自然と足は集会所へと向いていたのだった。
集会所の近くで粘ること数時間、芋を抱えた和子が緑川とともに集会所へ入っていく姿をしっかりと目撃したのだ。
「あれは・・・・・遠藤さん??」
ひょっとして彼女が、あの綺麗なお尻の持ち主なんだろうか??邪魔してやりたいわッ!!!

こうして中山は集会所のドアを叩き、緑川を連れ出すに至ったのだった。

緑川もまた、その瞬間を待っていたのだった。
「緑川さん、あの・・・。」
排水溝修理をする緑川の手を、突然中山は握り締めた。
「あの・・・・私・・。」
緑川は少しも驚かず、そんな中山を諭すようにゆっくりと口を開いた。
「見たんだって・・・・言いたいんですね。」
中山は思わず緑川の目をじっと見つめた。
どうして私の言いたいことを・・・・言い当てたのだろう・・・
緑川は中山の目をじっと見つめ、ほほえんだ。
「集会所、行きましょうか。」
集会所・・・中山は息を飲んだ。
あのときの光景が鮮烈に頭の中によみがえったのだった。綺麗なお尻にしゃぶりつく緑川の一心不乱な姿、それはあまりにエロティックで中山の心の芯を溶かしてしまうかのようだった。

集会所に行くということは、私もああやって緑川さんのものになるのだわ。
緑川さんは私の体にしゃぶりついて・・・・・

「行きます」
中山は答えた。

緑川は中山の目をじっと見つめ、ふっと笑った。中山はその笑顔に、まるで心臓が射抜かれるような思いがした。
なんて澄んだ瞳なのだろう・・・・
緑川は歩きだし、中山もその後に続いた。
一歩一歩、その足取りはとても重く、集会所への道のりが、今日はとても遠く感じられた。
そして、二人は無言だった。
この空気・・・・いつだか感じたことがあったわ。
中山はふと回想していた。

あれは中山が女子大生の頃だった。美人すぎるせいか男性とろくに付き合ったこともなかった中山は、趣味の囲碁を楽しもうと囲碁サークルに入ったのだった。もしかすると、囲碁の世界の王子様が私を連れて行ってくれるかもしれないと。
しかし、あまり世間で盛り上がっていない囲碁という分野に親しむ男性は、とても個性的で、中山を口説こうとするものはいなかった。これならテニス・サークルにでも入ったほうがよかったのかと悩むこともあったが、囲碁が好きなので幸せだった。そして、一年がたち、相変わらず囲碁を楽しんでいた中山だったが、あまり強くなかったために男性メンバーの練習相手となっていた。中山の旧姓は高野、皆から「たかちゃん」と呼ばれていた。
そんな、中山が2年生になってしばらくたったある日、昼休みに部室で漫画雑誌を読んでいると、工学部の福島という男性がやってきた。一年先輩だが、あまり囲碁サークルには顔を出さなかったので、中山と深い面識はなかった。
福島は囲碁サークルとプロレス研究会を掛け持ちしているとの話だったのだ。たしかに、囲碁サークルには似合わない隆々とした筋肉と、まるで外国人のような彫りの深い顔立ちは、どちらかというと囲碁より将棋が似合うので、サークルメンバーには「将棋さん」と呼ばれていた。
「将棋さん、おはようございます。」
「ああ、高野さん、おはよう」
「珍しいですね、将棋さんが部室に来るなんて」
中山は、皆が「たかちゃん」と呼ぶ中「高野さん」と呼ばれたので少し恥ずかしかった。
「筋トレの帰りなんだ、僕の筋肉はすごいんだよ」
「さすがプロレスですね、見せてくださいよ」
福島はくすりと笑って、上着を脱いでタンクトップ姿になった。
「ウワァ、すごいわ!」
極限まで鍛え上げられた、筋肉で固められているその肉体。中山は思わず声をあげてしまった。黒く日焼けしてたくましい腕、強さと繊細さを併せ持っているかのようだ。
「触ってみるかい?」
「ええ・・・・・」
中山はおそるおそる近づき、そのたくましい腕にそっと触れた。
「固いわ・・・。」
「腹筋も見るかい?」
「見たいわ」
福島はガバっとタンクトップを脱ぎ捨て半裸になった。
「すごい・・・・」
胸も腹も、まるで鋼鉄のような筋肉に覆われていた。
「割れてるんだ。」
「触っていいかしら」
「ああ」
中山は、その、腹筋の割れ目をなぞった。福島は胸筋をブルッと動かしてみせた。
「すごい、動いた!」
「鍛えているからね」
「ちょっと動かしてみてください」
中山は福島の胸に触れた。心臓の鼓動が手に伝わってきた。そして、福島が大胸筋を動かしてみせた。
「わあ、すごい!もっともっと!」
男性の体に触れたことのなかった中山は、その時、福島の乳首がそそり立っていることに気づいていなかった。
何度も福島が胸を動かし、中山は無邪気に触れて喜んでいた。
その時だった。
中山の指が、福島の乳首に触れてしまったのだ。
「はああっん・・・・。」
福島の口から漏れたのは、なんとも色気のある官能の叫びだった。中山の指先は、今まで感じたことの無い快感だったのだ。
「アッ・・・・・ごめんなさい。」
中山は手を引っ込めた。そして真っ赤になった。
男性経験がまったくなく、男性があんな声を出すなんて知らなかったのだが、それが官能の叫びであることに気づいてしまったのだった。それくらい、福島の叫びは、性的なものに満ちていた。
「ごめん・・・。」
福島も、下を向いて謝った。
そして二人の間に沈黙が流れた。とても長く、重く、気まずい沈黙だった。

・・・・・あのときの空気だわ・・・・。
緑川が落ち葉を踏む音が響く団地の裏通りを、集会所へと歩きながら、中山は思い出していたのだった。

どれくらいの沈黙を経ただろうか、福島は、ふいに中山を抱きすくめた。
「ハッ・・・。」
これが男性の体・・・・なにもかもが中山にとって初めてだった。すこし汗のにおいの染み付いた筋肉は、その固さに似合わずしなやかだった。ああ、これが男の人・・・・
福島のペニスは、天を突き刺すほどに勃起し、中山の体に食い込んでいた。

そして、そのまま部室で中山は処女を喪失したのであった。

そのときのことは今でも思い出すが、その前に流れた沈黙をまさに今、再び体験していることが中山の心を掻き立てた。あの時、乳首を、ペニスを固くさせながら、中山に体を触らせていた福島の気持ちがなんとなく今ならわかる気がする。
そう、この人と・・・・・・私はこの人と・・・・・
緑川の背中を見つめながら歩き、中山は満ち足りた気分になった。

つづく